日本では,年間約18万人の子どもが親の離婚を経験しており,離婚時や離婚後に問題となる子どもの親権,養育費,面会交流(親子交流)などを巡る社会的な課題が山積しています。しかし,日本における研究はまだ少ない状況にあります。

そこで,別居や離婚後の親子の心理的な側面,カップルの関係性等について,心理的観点から研究を行っています。子どもが親の離婚・再婚にうまく対処し,親の離婚・再婚に伴う苦痛が低下することを目指します。また,より良い親同士の関係,親子の関係を模索することで,親自身のストレスが軽減されることを目標とします。


研究内容

離婚後の父母や親子の関係性と子どもの心理的適応との関連
離婚後の父母は、子どもに関してどのように関わっていくことが望ましいのでしょうか。父母の関係性をあらわす「コペアレンティング(coparenting)」という概念に着目し、別居・離婚後のコペアレンティングと子どもの心理的適応との関連について、実証データに基づいた検討を行っています。
(現在、2年間にわたる短期縦断研究を実施中です)
別居・離婚後家族のリスクアセスメントツールの開発と実用性の検証
離婚等の紛争解決や面会交流支援の現場では、親や子どもの安全に配慮することが求められていますが、日本では、安全面を中心に別居・離婚後の家族をアセスメントするツールが存在しません。別居・離婚後の家族のリスクを多側面から測定して可視化する日本版アセスメントツールを開発し、裁判外紛争解決手続や面会交流支援の現場で活用することを目指します。
両親間葛藤と子どもの心理的適応との関連
両親のけんかは子どもにとってどのような影響があるのでしょうか。欧米では、両親のけんか、すなわち「両親間葛藤(interparental conflict)」が子どもに与える影響についての研究知見が蓄積されていますが、日本での研究は多くありません。欧米とは異なる日本独自の葛藤の存在の有無やその影響も含め、子どもと親のそれぞれの視点から研究を行っています。