研究業績

発達心理学研究 30, 2, 86-100 (2019)
別居・離婚後の子どもが体験する父母葛藤や父母協力の探索的検討

著者

直原康光・安藤智子

カテゴリ

査読付学術論文

Abstract

本研究の目的は,父母の別居・離婚後に子どもが体験した父母葛藤と父母協力の実態を明らかにすることであった。5歳から15歳までに父母が別居又は離婚した10代後半から40代前半までの男女14名に半構造化面接を行い,語りの内容を分類した結果,別居・離婚後の父母葛藤には,「他方親否定」,「板ばさみ」,「父母間の葛藤」が含まれ,父母協力には,「経済的支援の面での協力」,「別居親との交流のサポート」,「最低限の父母の信頼関係」が含まれていた。父母葛藤及び父母協力に加え,別居親との交流等をカテゴリー変数に変換し,コレスポンデンス分析等で類型化したところ,「父母協力・交流安定群」,「板ばさみ・交流不安定群」,「他方親否定・交流なし群」の3つに分類された。「父母協力・交流安定群」では,離婚を乗り切る上で友人等が支えになったことや,父母が離婚してほしくなかったと感じつつ,離婚は仕方がなかったと両価的な思いを語った者が多かった。「板ばさみ・交流不安定群」では,父母間の葛藤が高く家庭外の大人を頼りにして乗り切った者が多く,「他方親否定・交流なし群」では,直接の父母間の葛藤には晒されていないものの,別居親を否定される体験を積み重ね,周囲の大人や友人を支えに感じていた者が少なかった。後の2群では,多くの者が自分自身に否定的な影響があったと感じていた一方で,父母の離婚については肯定的に捉えている者が多かった。